システム経営とは、従業員が自由を感じるインフラの事。
2009-06-20 (土)日
今自分のしている仕事を楽しいと感じる人の割合 はどのくらいでしょう。2008年の調査で「率直に今の仕事は楽しいですか?」と言う質問に対し、10年以上働いている人では、「楽しい」と答えた人は、 12.2%に過ぎませんでした。逆に「仕事にマンネリ感を感じたことがあるか」という質問では、7割以上の人があると答えています。(サンプル364,I シェアブログJP調べ)
私のサラリーマン時代は仕事を楽しいと思えた時期と面白くないと思った時期があります。思い返すと「楽しい」と感じた会社は、仕事上の目標がシステ ム化されていて、システムの範囲内で権限と責任あり、従って創意工夫の余地がある。また仕事の結果は、システムによって自分だけではなく、周囲にも分かる 場合でした。「楽しくない」と感じた会社は目標がシステム化されておらず、その都度上司にお伺いをたて、権限もなく責任もないと感じ、また自分の働きぶり が自分にも周囲にもわかりにくい場合でした。
よく仕事上大切なこととして、「ホウレンソウ」すなわち、報告、連絡、相談を挙げる会社があります。一見情報共有をしている良い会社と思われがちで す。しかし実はこのような会社の多くはマネジメントシステムの無いので、それを人間関係がカバーしているだけ。行政指導みたいで属人的で曖昧です。このよ うな場合、権限も曖昧で従って責任も曖昧です。
私の先輩たちの世代、特に高度成長期を経験した世代はそれでも良かった。それは責任と権限が曖昧でも、自分の働きと、会社全体やひいては国全体の成長が繋がっているという実感を持てた。つまり自分の努力が、日本の経済成長や所属している社会の発展と言う形で実感できた。
日本は同じ仕掛けを維持して来たにもかかわらず、1990年代から低迷の時代を迎えます。不動産バブル崩壊が低迷の原因のように思われていますが、 私はたまたま時代の境目にバブル崩壊が重なっただけと考えています。ではその根本原因とは何でしょう。それは第三次産業革命とも言える、情報社会の到来だ と思います。世界経済、特に先進国の役割が製造業から情報業に変化して行かなければならない中、日本は製造業に重きを置いた社会体制を変えず、また企業も ホウレンソウのマネジメントスタイルを変えてきませんでした。(野口悠紀夫さん「40年代体制―さらば戦時経済」を読むと、この体制は実は1940年代に 作られた戦時経済が元になったそうです。)自分の働きと社会の成長の連動性が実感出来ない時代には、そこを埋める仕掛けが必要です。私はそれをシステム経営と呼んでいます。現代、経営システムを持っていない会社で働いている多くの人は、仕事を楽しいと感じる事が出来ないのがいろいろな会社を拝見してきた私の結論です。
ポスト工業時代に、経営者の仕事、それは「従業員が仕事に対して、やり甲斐や面白さを感じる事ができる環境を作ること」の一点に集約されると思います。それには、会社に システムを作り込むこと。従業員が権限と責任を実感し、大いにやり甲斐を感じながら仕事に没頭出来る「仕掛け」を社内に作り込むことです。
そのような取り組みは社員ひとり一人のスキルと精神、両面の成長に直結し、会社の創造性を高めます。大きな付加価値を作り出す組織をつく ります。このことを「ビジョナリーカンパニー」の著者Jコリンズは、「時を告げる人、時計を作る人」という寓話で説明しています。世界中の経営者に支持されている彼の著作に、システム経営の神髄が余すところ無く書いてあります。